前々回の「城門、スルーしていませんか?」のときに、門を楽しむコツは攻防戦の様子をイメージしてみること、といいました。実際の城歩きで試してみた人、いますか? 今回は、そのもっとヤバい版、枡形虎口(ますがたこぐち)です。
城の出入り口のことを「虎口」といいます。「門」は木でできた建物を指す言葉ですが、「虎口」は出入りする場所そのものを指す言葉です。平たくいえば、出入りのために石垣や土塁が切れている場所のことです。
うっかり入ったらやられちゃう「枡形虎口」
虎口は人が出入りする所ですから、戦いになったら敵の攻撃も集中します。そこで、攻めにくく守りやすい虎口が工夫されることになりました。その代表が枡形虎口。枡形とは、枡のように四角い形という意味ですから、枡形虎口とは四角く囲った虎口のことです。言葉で説明してもピンと来ない人は、駿府城の写真を見れば一目瞭然ですね!
たとえ外側の門を破って侵入しても、四角く囲まれた狭いスペースで内側の門をこじ開けようとジタバタしているうちに、まわりから矢玉を浴びせられて…という仕掛けです。何とも怖い仕掛けですが、城とは敵を防ぐための施設なのです。
枡形虎口と呼ばれているものには、いろいろなタイプがあります。そこを理屈で説明すると「侵入者を封殺するための構造を有する虎口」とか、「理論上2箇所以上で閉塞可能な構造をもつ虎口」となります。要するに「囲まれ感」があって「うっかり入ったらやられちゃう虎口」のことです。
イメージは“全滅”!どこから撃たれるか想像しよう
枡形虎口を見るときのポイントは、全滅イメージです。たとえば、下の写真の江戸城清水門。高麗門を入って通路が直角に折れますが、反対側(写真右手)がオープンになっています。ラッキー!なんて、喜んではいけません。実は、堀を隔てた石垣の上から撃ってくるようになっているのです。片側を開けてあるのは、射撃の邪魔にならないためだったのですね。ひどい!
なので、枡形の中に入ったら、どこから撃ってくるのか、どうすれば突破できるのか想像してみましょう。僕は城の研究をしているので、櫓門のある枡形虎口を見るときは、中をくまなく歩いて石垣にへばりついてみたりしながら、どこにいても必ずどこかから狙われて、死角がないことを確認します。ほかの観光客からは変な目で見られますが、友達と何人かで実行すれば、たぶん大丈夫です。
マイナーな土の城の枡形虎口にも注目
こうして全滅イメージができるようになると、マイナーな城でも枡形虎口を見つけて楽しめるようになります。下の写真の飯山城(長野県)は小さな城で、遺構の残りもそれほど良くありません。でも、本丸に枡形虎口がしっかり残っていて、来てみてよかったとお得な気分になれます。
以前に城歩きイベントで、参加者に城側と攻め手側に分かれてもらって、攻め手側が枡形に入ってきたら城側は土塁の上から一斉にカラーボールを投げる、というアトラクションをやったことがあります。「枡形虎口の原理が体感できた!」と大好評でした。
皆さんも、「囲まれ感」や「全滅イメージ」を体感できるよう、歩き方や写真の撮り方を工夫してみると楽しいですよ!
(写真・文/西股総生)
徳川家康の居城として知られる、静岡県静岡市の駿府城。近年は天守台の発掘調査による歴史的発見が話題となり、歴史ファンから注目を集めています。でも、歴史に詳しくなくたって、その凄さは充分感じられるんです。 そこで今回は、城は好[…]
江戸城の枡形めぐりツアーを開催します
枡形虎口に興味を持ったという方に朗報! 12月21日(土)に、江戸城の枡形虎口をめぐるイベントを開催します。
“枡形”って何だろう?という人も大歓迎!年の瀬の喧噪と慌ただしさを忘れて、半日どっぷり枡形虎口の世界に浸ってみませんか?
- 開催日:2019年12月21日(土)
- 時間:12時半~16時(12時受付開始)
- 集合場所:田安門付近
- コース: 田安門 → 清水門 → 平川門 → 大手門 → 桔梗門(外観のみ) → 桜田門(予定)
- 参加費:2000円(受付時に現金にてお支払いいただきます)
- 懇親会:終了後、希望者のみ17時頃~懇親会(別途会費制)を行います。ご希望の方は予約時に備考として記載ください。
- オプション:10時半~11時半頃まで1時間ほど、千鳥ヶ淵散策を追加できます。希望者は10時に田安門前に集合して下さい。(イベントと合わせると歩行時間が長くなるので、体力とご相談の上ご参加下さい。)
【諸注意】
※歩きやすい靴と温かい服装でご参加ください。
※昼食は各自済ませたうえでご参加ください。
※懇親会のみの参加は受け付けておりません。
※小雨の場合は決行しますが、天候により難しいと判断した場合は変更または中止する可能性がございます。(中止の場合は前日までにご連絡いたします)
本イベントは終了しました。