人気の刀剣・甲冑を贅沢にも独占鑑賞!「夜の侍展」レポート

2019年9月7日より福岡市博物館で開催されている特別展『侍~もののふの美の系譜~ The Exhibition of SAMURAI』(通称『侍展』)。来場者数6万人を突破し連日賑わいを見せているなか、レキシペリエンスは贅沢にも9/20と10/25の2日間にわたり夜間貸切観覧イベント「夜の侍展」を開催させていただきました。その模様とともに、本イベントを通して感じた『侍展』をレポートします。

夜間貸切観覧イベント「夜の侍展」

「夜の侍展」は少人数での夜間貸切観覧、しかも解説付きという特別企画。混雑する日中にはじっくり見られない名刀も独占できるチャンスとあって、両日ともに満員御礼での開催となりました。

人気ゲームの影響もあり、本イベントの参加者はほとんどが刀剣好きの女性でした。『侍展』では展示品にキャプションをつけられる“私のイチおし”という企画が実施されていますが、選抜メンバーが4名もいらっしゃるという精鋭ぞろい!


圧切長谷部のキャプションに選ばれた、推薦人のqhebiaさん。毎年展示されるたびに遠方から通いつめ、博物館スタッフからも「また来てる」と驚かれている。その愛ゆえの視点で綴られたキャプションは必見。

そんな有り余る愛と熱意を持った参加者の声に、真摯に応えてくれたのが『侍展』の企画者である学芸員の堀本一繫さん。堀本さんは『侍展』開催にあたり、「実戦のなかで進化した甲冑・刀剣の変遷をあわせて見てほしい」と語っていました。これは、刀剣に興味を持ってくれた方に、甲冑や戦い方を知ることでより理解を深めてほしいという意味でもあります。

刀剣好きの参加者にも、積極的に甲冑の解説をする堀本さん。皆さんも興味津々に聞いていました。写真は、徳川家康が関ケ原の戦いの際に携えたという南蛮胴具足(日光東照宮所蔵)。

イベントでは、注目度の高い刀剣だけでなく甲冑の見方や戦い方も詳しく解説。その時代の武具がなぜこの形になったのか、実物を見ながら変遷を辿ります。

刀剣好きの方々がどれだけ甲冑の話に興味を持ってくれるのか、正直なところ筆者は少々不安に思っていました。しかし観覧後には「解説を聞いて甲冑に興味を持った」という方も多くいらっしゃったようで、大事なのは興味を持つきっかけなのだと感じさせられました。

徹底したこだわりによって見られる最高の姿

そして参加者を驚かせたのは、展示への徹底したこだわりです。

特にライティングは、開催時に全体で7時間を要するほどのこだわりぶり。会期序盤から何度も調整しており、来場者から「刃文が見えにくくなった」という声があればすぐに修正されています。あくまでも来場者の目線で刃文や地肌が見えるよう、徹底しているのです。

同館が所蔵する人気の刀剣、圧切長谷部前にて。後期では裏側を展示。

圧切長谷部について「『侍展』での姿を見ていたら、年始の展示でがっかりしちゃうかも(笑)」と語る堀本さん。年始に展示される企画展示室ではこのようなライティングができないと聞き、『侍展』での最高に美しい姿を目に焼き付けようと多くの方が集まります。

いつも混み合っている短刀コーナーもじっくり鑑賞。堀本さん自ら見方をレクチャー中。

こだわりは刀の置き方にも表れています。たとえば短刀は縦置きにし、まるで手に取ったかのように見ることができます。

もっとも長い国宝の太刀「備州長船倫光」(日光二荒山神社所蔵)。重みで刃先が傷まないよう、刃を上にして展示しているという。

さらに甲冑は裏側まで見られるようにガラスケースに入れて展示。360度全方位から眺められるので、その作りをよく理解できますね。

ちなみに、「折角のすばらしい刀剣なのに、ガラスが汚れていては申し訳ない」と出勤日は毎朝ケースを拭いていたという堀本さん。外側は他のスタッフが拭いてくれていても、ケース内はご自身で行われたというお話には、頭が下がります。


10月16日より展示された銀伊予札白糸素懸威胴丸具足(仙台市博物館所蔵)。
豊臣秀吉から贈られたものだが、いつも重い甲冑を着ていた伊達政宗にとっては軽すぎるため、怖くて着なかったのではないかと堀本さんは語る。

どれも所蔵元にとって大切な品であるだけに、展示にはきちんと管理できる環境と人が必要となります。そのうえ、どう展示すべきかを決めるには相当の知識がなければ難しいでしょう。『侍展』がいかに貴重な展覧会なのか、改めて感じさせられます。

所蔵元ならではの愛を感じる一幕も

日光一文字について語る堀本さんと、解説を熱心に聞く参加者の皆様。滞在時間長め。

また、主催者である福岡市博物館ならではの愛を感じる一幕も。
同館が所蔵する人気の刀剣のひとつ、日光一文字について「福岡一文字では“最高傑作”」と満足そうに語る堀本さん。所蔵元ならではの愛と知識を兼ね備えた解説に、参加者からも笑みがこぼれます。冒頭でも紹介した通り、本イベントの参加者は特に刀剣への愛が強めの方が多くいますが、それを凌駕する愛をみせたのは堀本さんかもしれません。日光一文字と圧切長谷部がひときわ輝いて見えるのは気のせいでしょうか。「夜の侍展」は、主催者と参加者の思いを共有する場でもありました。

※ちなみに現在販売中の図録2刷では日光一文字の解説部分に「最高傑作」と追記されています。ぜひその目でお確かめください。

2版では画質もさらにアップデート。初版をお持ちでも2冊目の購入がおすすめ。
福岡市博物館といえば黒田家の名宝。大きな藤巴紋が印象的な特設コーナーも同館ならでは。銀箔押一の谷形兜・黒糸威五枚胴具足は、黒田長政が関ヶ原の戦いで着用したもの。

『侍展』の名にふさわしい特別展

『侍展』は、歴史に詳しい人ほどその豪華さを感じられるでしょう。特に、名だたる武将たちゆかりの甲冑がずらりと並ぶ様は圧巻。歴史好きにはたまらない空間です。

左からそれぞれ、伊達政宗・黒田官兵衛・立花宗茂・徳川家康といった戦国武将たちゆかりの甲冑が並ぶ豪華さ

展示を見終わって感じたのは、この特別展はまさに『侍展』の名にふさわしいということ。本イベントを通して、観る側にもそのコンセプトがしっかり伝わっている様子が見て取れました。『侍展』は、刀剣をきっかけに訪れた女性たちを、その先に導いてくれたのではないでしょうか。

『侍展』は11月4日(月・振休)まで。貴重な武具が一同に会する豪華特別展をどうぞお見逃しなく。

本イベントに参加してくださった皆様、また開催にあたりご協力いただきました福岡市博物館の堀本様はじめスタッフの皆様、事務局の皆様に心より御礼申し上げます。

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特別展『侍~もののふの美の系譜~ The Exhibition of SAMURAI』

会期: 2019年9月7日(土)~11月4日(月・振休)
開館時間: 9時30分~17時30分 (入場は17時まで)
休館日:毎週月曜(祝日の場合は翌平日)
会場:福岡市博物館(〒814-0001 福岡市早良区百道浜3-1-1)

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