城門、スルーしていませんか?|見つけて楽しむ!お城のツボ:第4回

城の中で、案外スルーされがちなのが。城を歩いていても、じっと城門に見入っている人って、あまりいませんよね? でも、門はそもそも入城者に対する大切なチェックポイント。だったら、スルーするのは失礼です。たまには立ち止まって、じっくり付き合ってみようじゃないですか。

 名古屋城・表二之門。
名古屋城・表二之門。本丸の正門なのに皆さん素通りでござる。

たくましく頼もしい「高麗門」

門は、柱を2本立てて間に扉を付けた構造をしていますが、それだけでは倒れやすくて、敵の攻撃を防ぎきれません。そこで、2本の柱の後に支えになる控え柱を立てて、控え柱の上にも屋根をかけた形が高麗門(こうらいもん)。城門の代表的なタイプですね。

高麗門といっても、この形は朝鮮半島にはないので、文禄・慶長の役(豊臣秀吉による朝鮮出兵)の頃に、日本側が作り出したスタイルなのかもしれません。というのも、実は戦国時代までは、お寺やお屋敷に建てるタイプの門を、そのまま城にも使うのが普通だったからです。
お寺やお屋敷の門は、扉の上下に木の棒が突き出していて、それを木製の軸受けに差し込んで、扉を開閉させるようになっています。でも、これでは激しい戦いになると、バキバキと破られてしまいます。そこで編み出された新兵器が高麗門。

姫路城・大手門
姫路城・大手門。高麗門は控え柱の上にもキュートな屋根が付く。

城へ行ったら、よく観察してみましょう。扉は、大砲の砲身みたいなゴツい鉄製の金具で柱に取り付けてありますね。これなら、敵が大勢で体当たりをかましてきても、ちょっとくらい鉄砲の弾が当たっても平気です。

おまけに、たいがいの高麗門は扉の表面に鉄の板を張ってあります。防弾板です。控え柱の上にも屋根をかけている理由がわかりましたか? 開けている扉が雨で濡れて、鉄板が錆びてしまうと悲しいからです。雨の日に城を歩くことがあったら、高麗門の扉を確かめてみましょう。よほどの暴風雨でないかぎり、濡れていませんよ。

大坂城・大手門の高麗門
大坂城・大手門の高麗門は扉も門柱も鉄板張り。
雨でも鉄板は濡れていませんでした。

もう一つ、実物を見て確かめてほしいのが、控え柱の立ち位置。メインの柱より少しだけ外側に立っていて、上から見るとハの字に開いていることが多いです(例外もあります)。この方が、ふんばりがききそうですね。どうですか? 今まで何気にくぐっていた高麗門が、たくましく頼もしい守護神に思えてきたでしょう?

江戸城・平河門の高麗門
江戸城・平河門の高麗門。控え柱がハの字に踏ん張っているのがわかるかな?

戦闘力抜群の「渡櫓門」

高麗門と並んで城門に多いのが、渡櫓門(わたりやぐらもん)。石垣の上に細長い櫓を渡して、その下を門にしたスタイルです。渡櫓門は、門と櫓がセットになっていますから、戦闘力抜群ですね。

福山城・筋鉄御門(すじがねごもん)。
福山城・筋鉄御門(すじがねごもん)。
その名の通り筋骨隆々たる渡り櫓門。たくましい!

戦闘力。そうです! 門を見るときは、攻防戦の様子をイメージしてみましょう。雨と降りそそぐ鉄砲玉をはじく扉、雄叫びをあげながら突進してきた敵兵を受け止めてきしむ金具、懸命に持ちこたえようとする閂(かんぬき)。

そんな妄想を楽しんだら、次は渡櫓門です。内部を公開している渡櫓門を見かけたら、すかさず見学しましょう。小田原城の銅門(あかがねもん)や、駿府城の東御門(ひがしごもん)など、現存ではありませんが、かなりていねいに復元されていて内部も公開しているので、おすすめです。

佐賀城・鯱の門。
佐賀城・鯱の門。何となく九州男児っぽい風貌。佐賀弁で説教されそう。

渡櫓門の中に入ってみると、門に向かってくる敵兵(観光客だけど)が丸見えです。床板の一部をはずして、下を通る敵に石を落としたり、鉄砲を撃ちかけたりできる仕掛けもあります。

駿府城。復元された東御門の内部。こんな所に石落としが!

「しまったあ、下をくぐるときは気づかなかったあ!」
こんなふうに、門をじっくり見て楽しめるようになれば、ひとつひとつの門の特徴もわかってきます。自分好みの門をさがしてみるのも、楽しいかも!

(写真・文/西股総生)

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