石垣は飽きない|見つけて楽しむ!お城のツボ:第1回

城をあつかった本や雑誌の特集、WEBサイトなどを見ていると、だいたいビギナー向けの講座があって、城の基礎知識や用語を解説しています。そういう基礎知識や用語は頭に入っているに越したことはありません。でも、知識がなくても城は楽しめます。そんな城の楽しみ方を皆さんにお伝えするこの連載、第1回目は「石垣」をピックアップしてご紹介しましょう。

有名な城の石垣を見てみよう

ためしに、どこか有名な城へ行ってみましょう。大坂城でも名古屋城でも、姫路城でも江戸城でもかまいません。そうしたら、まず石垣の前に立って、つくづく眺めてみましょう。
たくさんの石が、足元からずっと上まで積み上げられています。一つ一つの石は大きくて、どっしりと重そうです。

福山城の石垣。新幹線の福山駅を降りると、目の前に立派な石垣が!
 

「わー、高いなあ! とても登れそうもないや…」
「これ、積むの大変だっただろうなあ…」

基礎知識や用語を知らなくても、こう感じた瞬間に、あなたは石垣で一番大切なことを学んでいます。なぜなら、城とは、そもそも「敵を防ぐための施設」だからです。
攻めてくる敵がいなければ、手間ヒマかけて堀を掘ったり、石垣を積んだりする必要などありません。敵を攻め込ませないための鉄壁の守り、それが石垣なのです。

あなたはどっちが好き?個性的な石垣たち

端正なイケメン!大坂城の石垣

大坂城。石の大きさが揃っているので目地が横に通る。端正なイケメン石垣。

いろいろな城を歩いてみると、城によって石垣にも個性のあることがわかります。

たとえば、上の写真は大坂城の石垣。
実物を前にすると、まずその高さというかボリューム感に圧倒されますが、よく見るとリズミカルで端正な感じがするでしょう?

ワイルドな武闘派!江戸城の石垣

江戸城本丸東側の石垣は武闘派のワイルドボーイ。

一方、こちらは江戸城本丸の石垣。
江戸城には、いろいろなタイプの石垣が残っていますが、これは徳川家康の時代に積んだもの。大坂城にくらべてワイルドな感じがしますね。いつ、戦争が起こるかわからない時代には、大急ぎで守りを固めなければならなかったからです。何だか、築城現場の慌ただしさが伝わってくるような気がします。
あなたは大坂城と江戸城本丸の石垣、どちらのタイプが好みですか?

探して!石垣に隠れた面白い形

同じ江戸城でも、下の写真は平和な時代に築き直した石垣。とてもていねいに石を加工して、ピッタリ合わせています。うすーい石を差し込んで、隙間をなくしているところなんか、職人の意地みたいなものを感じます。

江戸城にて。板のように薄く削った石で、ていねいに隙間を埋めている。

こうしてながめているうちに、面白い形に気づくことがあります。

江戸城にて。手間のかかり方から見て、作為的にS字とした可能性が高い。

たとえば、上の写真はS字に、下の写真は星形に見えませんか?

江戸城の石垣
江戸城にて。天守台にあるので、ポケモン気分で探してみよう。

自然にこうなったとは、とても思えません。江戸城へ行ったらぜひ、探してみて下さい。

城の石垣では、目立つところにとびきり大きな石を据えることがよくあります。大坂城も、大手門の正面にものすごく大きな石を二つ据えていますが、僕が気になったのは、二つの巨石の間を埋めている部分。

大坂城大手門の石垣
大坂城大手門の石垣。ものすごく手間をかけて石どうしをすり合わせている。

曲線のラインが、何ともセクシー!  真っ正面にこんな細工をするなんて、狙っているとしか思えません。さては、江戸城のS字や星形も、ウケ狙いだったか!

大坂城天守台
大坂城天守台

最後に一つ。上の写真は、大坂城を散策しているときに、天守台で見つけたものです。大きな石を組み上げた天守台の角のところに、場違いなほど小さな石が、つっかえ棒のようにはまっているではありませんか。まるで、巨大な天守を何百年もひっそりと支えつづけてきたみたいで、その健気さがいとおしくなってしまいました(笑)

石垣の楽しみ方は人それぞれ

こんなふうに、自分が美しいと思えるタイプをさがしたり、変わった積み方を見つけたり。石垣の見方・楽しみ方は、人それぞれではないでしょうか。僕は、本で読んだ知識や情報を確認して歩くだけ、みたいな城歩きは退屈だと思います。

さあ、あなたも自分の感性を解き放って、城を歩いてみませんか?

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