2019年6月、東京・神保町にて西股総生先生の連載「お城のツボ」のワークショップを開催しました。城の見方をお話いただくトークイベントはよくありますが、レキシペリエンスのコンセプトは『体験』。ということで、今回は石垣の仕組みを少しでも感じてもらえるよう、特製“石垣パズル”を使ってのワークショップ形式にしました。はたしてその内容とは? 当日の模様をレポートします。
探してみよう!石垣の面白い積み方
まずは西股先生が、自身で撮影された石垣写真コレクションを披露。
連載第1回でもご紹介した笑い積みなど特徴的な石垣を見ながら、「なんでわざわざこんな積み方を…」とツッコみを交えて解説してくださいます(笑)西股先生のお話と写真に、皆様も興味津々。
江戸城や大坂城など、有名な城の石垣にもこんな面白ポイントがあるなんて、意外と知られていないのでは?
様々な積み方を見ていただいたところで、いよいよワークショップの時間。自分だったらどうやって石垣を積むか、特製の石垣パズルで試してもらいました。
パズルで石垣を積んでみよう!
参加者の皆様を東軍・西軍の2手に分け、30分以内にそれぞれ石垣を築きあげてもらいます。今回、最年少はなんと6歳!小学生・中学生も交えた幅広い年齢層で挑んでいただきました。
両軍ともに城好きの参加者が集まっていることから、おのおの石を選ぶとすぐに取り掛かっていきます。進めていくうちに、指揮する人、間詰め担当、石切担当など、それぞれの役割分担もできあがっていき、どんどん形ができていくのが面白い!
途中、西股先生による鬼検閲も入ります。
「上が平らじゃないと、櫓が乗らないよ~」
「ほらここ、間詰めが甘いッ!」
先生の指摘を受け、慌てて改修作業を行う両軍。制限時間ギリギリまで、間詰め作業に追われます(笑)
完成!西股先生による講評の結果は…?
なんとか制限時間の30分でここまで積み上げた両軍。お疲れ様でした!
素材には大差ありませんが、ぱっと見ただけでもこれだけ違いが表れるものなんですね。皆様もここで初めて相手軍の石垣を見て、その違いに感心していた様子。
そして、西股先生による講評ターーイム!
西股「東軍の石垣は、高さにこだわり、時間内にとにかく積み上げ切りましたね。一方で西軍の石垣は、高さを我慢した代わりに、かっちりと積んでいます。これは時間がないときの現実的な手段で、とても戦国的だと思いますよ。
ただ、どちらも算木が残念でしたね(笑)」
実際の石垣と比べてみると…
西股「実物の写真を見てみるとわかりますが、第一石をどう置くかがとても大切です。つまり、算木に適した石を見分けられるかどうかにかかっている。これがわかっていないと、きれいな扇の勾配にならないのです。」
実際にたくさんの石垣を見てきた城好きの方でも、パズルを使って自分で積んでみると難しいようで…。実際の石だったら、それはもう大変だったことでしょう。
西股「また、間詰めや角脇石をちゃんと入れておかないと簡単に崩れてしまうこと、色のバランスの難しさなどもわかりますね。」
先生のコメントに、自分の軍の石垣を見直す皆様。うーん、奥が深い!
そして気になる勝負の結果は・・・
どちらも優劣つけがたいということで引き分けとなりました。
本日の総括
西股「今回のパズルをひとりで全部積んでみたいと思った方もいるでしょう。でも、そもそも石垣は大勢でわっと積むもの。作業を分担して、声を掛け合って、どうやってうまく積み上げるか。その工程の難しさも、少し感じられたのではないでしょうか。今後、石垣の見方もちょっと変わると思いますよ」
初心者から城好きまで、意外な発見があった石垣ワークショップ。城歩きとセットで体験いただくと、より面白いかもしれません。ご要望があればまた開催したいと思いますので、興味がある方はぜひご参加ください。一見子供の遊びのようですが、やってみると石垣の魅力にハマってしまうはずですよ。
ご参加いただいた皆様、そして西股先生、ありがとうございました!
体験者アンケート
さっそく、帰りに江戸城の石垣を見に行きました。今までは野面積み派でしたが、切込み接ぎにもはまりそうです。
ひとりではなくチームで積み上げる面白さと難しさを感じられました。昔の現場は大変だっただろうなぁ。今後はそういう視点でも、石垣を見てしまいそうです。