現存する日本最古の弁当屋「日本橋 弁松総本店」
江戸時代の嘉永3年(1850年)、日本橋で創業した弁松(べんまつ)は現存する弁当屋で最も古いお店といわれています。
初代・樋口与一が日本橋の魚河岸で営んでいた食事処で、客が残した料理を持ち帰りできるようにし好評を博したことが始まりとなりました。その後折詰弁当を売りはじめ、三代目・松次郎の代で弁当販売を主流にしています。「弁松」という名前は「弁当屋の松次郎」を略しているそうです。
以来、江戸ならではの味を守り続け、今も日本橋で老舗弁当店として親しまれています。
江戸ならではの濃ゆい味付け
弁松のお弁当の特徴は、なんといっても江戸時代から変わらない甘辛の濃ゆ~い味付け。
味付けが濃い理由としては、
・弁当なので日持ちさせるため
・肉体労働に耐えられるようカロリーを高くするため
・江戸っ子ははっきりとした味を好んだ
など、当時の江戸っ子の生活や趣向に合わせたとされています。
特に江戸時代は多くの労働者たちが江戸に集まり、ご飯をたくさん食べられる濃い味付けが好まれていました。それが定着し、関東は関西に比べて濃い味付けが主流となったようです。弁松の味付けは、江戸時代に好まれた味をそのまま継承しているということですね。
弁松の歴史を知らずにお弁当を食べたお客様からは「味が濃すぎる」といわれることもあるそうですが、創業当時からの味として変わらず販売し続けています。
弁松を代表する弁当「並六」
弁松を代表する弁当といえば、こちらの「並六(なみろく)」です。お店でも、迷ったらまずこちらがおすすめと言ってたので筆者も購入してみました。
並六という名前はサイズからきているそうで、小さいながらも経木(きょうぎ)の折箱には弁松自慢のお惣菜がぎっしり詰まっています。
【並六のお惣菜】
・野菜の甘煮(うまに)
・玉子焼
・めかじきの照焼
・生姜辛煮
・豆きんとん
お弁当に欠かせないおかずといえば、やっぱり玉子焼! 今も職人さんが毎朝手焼きしているという弁松の玉子焼きは、口の中で濃い出汁がじわっと広がります。
野菜の甘煮はその見た目からも味がしっかり染み込んでいるのがわかりますね。甘辛で濃い味付けの甘煮は、ご飯が進むくせになる味です。
特に筆者が好きだったのが、生姜の辛煮。生姜と昆布を辛口に煮た佃煮のようなもので、全体的に甘い味付けのなかで程よいアクセントになっています。
折箱の端に詰められているのは豆きんとん。きんとんは漢字で「金団」と書くように金運・財運アップに良いとされ、おせち料理でも栗きんとんがおなじみですが、弁松では豆のきんとんです。これは「まめに働いて財を成す」という意味なのだそう。おかずとは違った甘みのスイーツとして味わえます。
全体的に甘辛の濃ゆい味付けとなっているので、確かにご飯が進みます。現代の味付けに慣れていると少し濃くは感じますが、江戸時代の味を味わっていると思いながら食べていると、自分も江戸っ子になった気分に。
ちなみにご飯は白米と赤飯、たこめしもあり、おかずだけでも販売していますよ。
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日本橋本店で購入するなら、電話での予約販売のみとなっているためご注意ください。仕込みに時間がかかるため、注文はお早めに。三越や高島屋など都内の一部百貨店でも販売されていますので、気軽に買いたい方はそちらがおすすめです。
江戸ならではの味が楽しめる弁松のお弁当、歴史好きならぜひ一度味わってみてはいかがでしょうか。
住所:〒103-0022 東京都中央区日本橋室町1-10-7
アクセス:銀座線・半蔵門線「三越前」駅 徒歩3分
電話番号:03-3279-2361
公式サイト:http://www.benmatsu.com/index.html
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(写真:レキシペリエンス編集部)
参考サイト:日本橋弁松総本店
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