佐賀県 武雄温泉楼門と東京駅は干支で繋がっている？建築家・辰野金吾が仕掛けた十二支の謎

武雄温泉のシンボル・楼門に描かれた4つの干支

1300年以上もの歴史がある佐賀県の武雄温泉。江戸時代には長崎街道の宿場町として栄え、伊達政宗や宮本武蔵、幕末には吉田松陰やシーボルト、伊能忠敬など、多くの偉人たちも入湯したと伝わっています。

現在、そんな武雄温泉のシンボルとなっているのが楼門です。大正4年（1915年）4月12日に完成し、平成17年には国の重要文化財にも指定されました。

天平式と呼ばれる独創的な様式と鮮やかな朱塗りが特徴的で、まるで竜宮城の入り口のように観光客を迎えてくれます。

そんな武雄温泉楼門の見どころとして注目されているのが、2階天井に彫られた4つの干支の絵です。

天井の四隅には、東西南北を示す「子（ねずみ）」「卯（うさぎ）」「午（うま）」「酉（とり）」の4つの干支が見られます。

それぞれ約30㎝四方の杉板に彫られて彩色されており、当時のまま保存されています。

これらの干支は、平成25年（2013年）保存修理が行われた際に発見され、大きな話題となりました。なぜなら、この楼門に描かれた4つの干支は、遠く離れた東京駅と意外な関係性があると思われるからです。

東京駅のドーム天井に足りなかった干支の謎

大正3年（1914年）に開業した東京駅。東京大空襲により消失してしまったドーム天井が、2012年に建設当時の姿に修復されました。レトロな赤レンガの外観は、東京駅の象徴として親しまれています。

その復元されたドーム天井の中をじっくりご覧になってみてください。

よく見ないと気付きづらいかもしれませんが、実はこの美しい八角形の天井装飾の隅に、12干支のうち8干支の石膏レリーフがあるのがお分かりでしょうか。

拡大して見てみましょう。

このように、東京駅ドーム天井の八角形の隅には、それぞれ丑（うし）、寅（とら）、辰（たつ）、巳（み／へび)、未（ひつじ）、申（さる）、戌（いぬ）、亥（いのしし）の干支レリーフが復元されています。

これらのレリーフについて、なぜ12干支のうち8つの干支しかいないのか、単純に天井が八角形だから8つしか選ばれなかったのか、何か理由があるのか長年謎とされていました。

しかし、2013年にその答えが見つかります。東京駅に足りなかった4つの干支こそ、佐賀県の武雄温泉楼門で発見された子・卯・午・酉なのです。

つまり、東京駅の8干支と佐賀県の武雄温泉楼門の4干支を合わせると、十二支がそろうというわけですね。

この遠く離れた2つの建築にそんな関係が？と思われるかもしれませんが、実はともに建築家・辰野金吾氏が設計したという共通点がありました。

建築家・辰野金吾氏による仕掛け

明治から大正にかけて活躍し、近代建築の父と呼ばれる建築家・辰野金吾（たつのきんご）氏。東京駅のほか、日本銀行本店など数々の名建築を設計したことで知られています。

辰野が設計した東京駅と武雄温泉楼門は、ともに1914～1915年という同時期に完成しました。なぜこの2か所にそれぞれ干支を分けて施したのか、その理由は設計した辰野本人にしかわかりません。しかし、佐賀県唐津市出身だった辰野が、東京駅と同時期に地元・佐賀県の武雄温泉を手掛けることになり、遊び心を見せたのかもしれませんね。

ちなみに武雄温泉の新館も辰野による設計で、こちらも同様に重要文化財に指定されています。現在は資料館となっており見学できるので、武雄温泉に立ち寄った際はあわせてご覧ください。

武雄温泉楼門干支見学会が開催中

武雄温泉楼門の干支は「楼門干支見学会」に参加すれば見ることができます。

火曜以外の毎朝9時から、観光ボランティアガイドさんによる解説付き見学会が開催されているので、興味がある方はぜひ参加してみてくださいね。入浴券付きなので、見学後は武雄温泉での朝風呂もお忘れなく！（見学のみ、入浴しなくてもOKです）

令和5年3月31日（金）までの限定公開となっているため、必ず事前に武雄市観光協会のHPをご確認のうえ参加ください。